建設工事の現場には、企業に雇用される労働者ではなく、一人親方といわれる、事業主として仕事を請け負い労働に従事する方も多いです。
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」において、作業員の現場入場については、「適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきである」とされています。
一人親方の場合の社会保険の扱いはどうなるのでしょうか。
一人親方が加入しなければならない適切な保険とは?
1)雇用保険について
一人親方は企業に雇用される労働者ではありませんので、雇用保険に加入することができません。
2)健康保険について
日本の健康保険制度は国民健康保険法により「国民皆保険」が基本で、国内に住所がある方であれば年齢や国籍(外国籍の方は在留期間が1年以上と決定された場合)に関係なく必ず何かしらの健康保険に加入しなくてはなりません。
その中で、次の要件のうちどれにもあてはまらない方は国民健康保険に加入する必要があります。
①企業に雇用され健康保険に加入している方とその扶養家族
②船員保険に加入している方とその扶養家族
③国民健康保険組合に加入している方とその世帯家族
④75歳以上の方(後期高齢者医療制度の対象者)
⑤生活保護を受けている方
一人親方は①~⑤のいずれにも該当しないため、国民健康保険に加入する必要があります。
3)国民年金
健康保険と同様、国民年金においても、国民年金法により「国民皆保険」が基本です。
日本に住所を有する全ての方を対象とした年金制度ですので、一人親方は国民年金に加入することとなっています。
よって、一人親方が加入しなければならない適切な保険とは、国民健康保険と国民年金です。
これらに加入していれば、現場入場を認められないというようなことはありません。
労災保険について
労災保険とは、業務上の災害や通勤途中の災害により、労働者の負傷・疾病・障害が残った場合、または死亡した場合、本人、又は遺族に保険給付を行って労働者や遺族を保護する制度です。
建設業においては、下請けの従業員は、元請のかける労災保険が適用されます。つまり(元請の社長、下請けの社長を除く)、元請け・下請けの全ての従業員が、元請の労災保険に加入していることになります。
しかし、一人親方は労災保険の対象外となっており、下請従業員として元請けの労災保険に加入することができません。
そこで、これらの方々も労災補償を受けることができるように、特別に労災保険に任意加入が認められているのが一人親方労災保険の特別加入制度です。
労災保険に特別加入すれば下請けの従業員と同じように、業務上の災害や通勤途中の災害によるケガや病気の治療費、休業や障害に対する補償等の労災保険が適用されることになります。
この労災保険に加入するためには、労働局が認可した労働保険事務を代行する「労働保険事務組合」を通して入会する必要があります。
まとめ
企業や事業所に雇用されない労働者である一人親方は、個人で必要な保険に加入しなければなりませんが、適切な保険に加入していれば、問題なく建設業の現場で働くことができます。
また、本来は労働者にあたるような場合であるのに企業側が労働者として保険に加入させなかったというような事例もあります。
労働者として雇用しているような形態であれば、企業の側で適切な保険に加入するようにすることが必要です。