建設業においては、平成29年度を目標年次として、平成24年より業界関係者が一体となって社会保険等未加入対策に取り組んでいます。
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」において、作業員の現場入場については、「適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきである」とされています。
「適切な保険」については、所属する事業所の形態が法人であるか個人であるか、また、法人の場合は労働者であるのか役員であるのか、個人の場合は、労働者であるのか事業主であるのか、労働者を何人雇用しているのかといった事により、加入するべき保険は異なり、全ての者が同じ保険に加入しなければならないわけではありません。

 

 

社会保険とは

ここでいう社会保険とは、雇用保険、健康保険、厚生年金を指します。

1)雇用保険
労働者が失業した場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行う。
(失業等給付)
また、失業の予防、雇用状態の是正・雇用機会の増大、労働者の能力の開発等により労働者の福祉の増進を目的とする。
(雇用安定事業・能力開発事業)

2)健康保険
病気や怪我などの出費に対して自己負担が軽減される他、出産・育児に対する一時金の支給等を行う。

・協会けんぽ
自社の健康保険組合を持たない中小企業の従業員を対象とする全国健康保険協会が運営する健康保険。

・健康保険組合
常時700人以上の従業員が働いている企業が、自前で健保組合を設立したもの。
健康保険組合は、複数の会社が共同で設立することもできるが、その場合は、合計で常時3,000人以上が必要となる。
大企業または、そのグループ子会社が加入している場合が多い。

・国民健康保険組合(建設国保等)
健康保険の適用を受けない自営業者・非正規雇用者・無職者などを対象とし、その傷病・出産・死亡などに関して必要な保険給付を行うことを目的とする公的医療保険。

3)厚生年金
会社員が加入する年金制度。
老後の備えとなるだけでなく、障害を負った時や子どもや家族を残して死亡した場合の遺族保障などの給付を行う。

 

適切な保険とは

適切な保険とは、所属する事業所やその労働者数、就労形態によって異なります。

国土交通省の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」には次のようにあります。

 

法人の場合や個人事業主であっても5人以上の労働者を雇用する場合、事業主はその雇用される労働者を雇用保険、健康保険、厚生年金の3つに加入させなければなりません。

労働者数が5人未満の場合、雇用保険は加入させる義務がありますが、健康保険と厚生年金は加入させる義務はありません。

しかし、個人で国民健康保険や国民年金に加入するよう指導することが望ましいです。

 

特段の理由とは

適切な保険に加入していることを確認できない作業員でも、特段の理由がある場合は現場入場を認められるケースがあります。

特段の理由とは、工事の円滑な施工に著しい支障が生じる懸念がある場合を除き、以下の場合に限られます。
1)当該作業員が現場入場時点で60歳以上であり、厚生年金保険に未加入の場合(雇用保険に未加入の場合はこれに該当しない)
2)例えば伝統建築の修繕など、当該未加入の作業員が工事の施工に必要な特殊の技能を有しており、その入場を認めなければ工事の施工が困難となる場合
3)当該作業員について社会保険への加入手続き中であるなど、今後確実に加入することが見込まれる場合

なお、仮に特段の理由により入場を認めた場合であっても、引き続き加入指導は行う必要があります。

 

まとめ

社会保険に加入することで、失業した場合、病気や怪我をした場合、家族を残して死亡した場合などに給付が行われ、従業員やその家族を守ることができます。
それぞれの事業所に応じた適切な保険に加入して、建設業における労働者の保護を行い、安心安全な環境で優秀な技能労働者が育成されることが大切だと思います。