平成28年6月1日から「建設業法等の一部を改正する法律」が施行されました。
その改正点の一つに解体工事業の新設があります。
背景
戦後の高度経済成長に伴い、建設ラッシュとなり多くの建物が建てられましたが、昨今はその老朽化が問題となっています。耐用年数が迫り立て替や修繕が必要となっており、また、大規模災害への備えという観点からも、立て直しが進んでいます。
新しく建物を建てるにはその前に古い建物を解体する必要があります。解体工事に関しては、建設から何十年も経過していることもあり、取り壊される建物の設計図等の入手が困難な場合も多く、経験と勘などに頼って作業を行うなど、新築工事におけるような技術革新が進んでいない状況です。また、限られた施行期限と現場スペースのためか、近年、解体工事現場における事故が多発しています。
そこで、解体工事が増えるなかで適切な施工体制を整えることが求められました。具体的には、解体工事業の質を向上させ、事故を防止し、適正な施工を維持確保していくために、法により定められた実務経験や資格を有する技術者を現場へ適正に配置する必要が出てきました。
こうした背景を踏まえ、今回業種区分を見直し「解体工事業」が新設されました。
要件
①経営業務の管理責任者
1)「解体工事業」について、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
2)改正施行日以前の「とび・土木・コンクリート工事業」について、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
3)上記以外の建設業で7年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
②技術者
1)監理技術者の資格等は次のいすれかの資格等を有する者
・1級土木施工管理技士 ※1
・1級建築施工管理技士 ※1
・技術士(建設部門、総合技術管理部門(建設)) ※2
・主任技術者としての要件を満たす者のうち、元請けとして4,500万円以上の解体工事業に関して、2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
2)主任技術者の資格等は次のいずれかの資格等を有する者
・上記1)の監理技術者の資格のいずれか
・2級土木施工管理技士(土木) ※1
・2級建築施工管理技士(建築又は躯体) ※1
・とび技能士(1級、2級) ※3
・建設リサイクル法の登録試験である解体工事施工技士
3)実務経験年数
・大卒及び専修学校専門課程卒で専門士及び高度専門士(指定学科) 3年以上
・高卒及び専修学校専門課程卒(指定学科) 5年以上
・その他10年以上の実務経験
・「土木工事業」及び「解体工事業」に係る建設工事に関し、12年以上の実務の経験を有する者のうち、「解体工事業」に係る建設工事に関し、8年を超える実務経験を有するもの
・「とび・土木・コンクリート工事業」及び「解体工事業」に係る建設工事に関し、12年以上の実務経験を有するもののうち、「解体工事業」に係る建設工事に関し、8年を超える実務経験を有する者
※1 平成27年度までの合格者は、「解体工事業」に関する実務経験1年以上又は登録解体工事業講習の受講が必要です。
※2 当面の間、「解体工事業」に関する実務経験1年以上又は登録解体工事業講習の受講が必要です。
※3 2級合格者の場合、合格後解体工事業に関して、3年以上の実務経験(平成15年度以前の合格者の場合は1年以上の実務経験)を有することが必要です。
経過措置
①許可
改正前の建設業法では、解体工事は「とび・土木・コンクリート工事」に含まれていました。そのため、施工日(平成28年6月1日)から3年間(平成31年5月31日まで)は、「とび・土木・コンクリート工事」の許可で解体工事業を営むことができます。
経過措置後は、新たに「解体工事業」の許可を取得しなければ、解体工事業を営むことはできなくなります。
②解体工事業者登録
1件あたり500万円未満の解体工事を請け負う場合は、建設リサイクル法により、解体工事を施工する場所を管轄する都道府県ごとに解体工事業社登録をする必要があります。
改正前の建設業法では「土木工事業」「建設工事業」「とび・土木・コンクリート工事業」を取得している者は解体工事業者登録の必要がありませんでした。
今回の建設業法改正で「解体工事業」が新設されたことにより、「とび・土木・コンクリート工事業」はこの対象から外されることになりました。
ただし、平成28年6月1日以前に「とび・土木・コンクリート工事業」の許可を得て、解体工事業を営んでいる者については、平成31年5月末日までは、経過措置により解体工事業登録の必要はありません。(平成28年6月1日以降に「とび・土木工事業」の建設業許可を得た者が、解体工事業
を請け負う場合は、解体工事業者登録を行う必要があります。)
③経営業務管理責任者
改正法施行日(平成28年6月1日)以前の「とび・土木・コンクリート工事業」に係る経営業務管理責任者としての経験は、「解体工事業」の経営教務管理責任者の経験とみなされます。
④技術者
改正法施行日(平成28年6月1日)時点で、「とび・土木・コンクリート工事業」の技術者の要件を満たしている者は、平成33年3月31日までの間は、「解体工事業」の技術者とみなされます。ただし、経過措置後は技術者としてみなされなくなる資格がありますので、注意が必要です。
まとめ
解体工事の適正な施工体制を確保するために改正された建設法により、新たに解体工事業を営むには「解体工事業」の許可が必要となりました。
経過措置により、すぐに許可が必要となるわけではありませんが、経過措置後に要件を満たし「解体工事業」の許可が取得できるよう準備をしておくことが必要ですね。