廃棄物とは、自分で利用したり売却したりできないために、不要となったものです。廃棄物処理法では、廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物の2つに分類されています。
一般廃棄物とは産業廃棄物以外の廃棄物です。つまり、産業廃棄物に該当しないとされるすべての廃棄物をいいます。
では、産業廃棄物とはどのようなものでしょうか。
産業廃棄物とは
産業廃棄物と聞くと、環境に悪影響を及ぼすもの、危険なものというイメージがあります。しかし、法律で明確に分類されており、現在の法律では、簡単に言えば、事業活動により排出される廃棄物のことで、主に2つに分けられています。
①あらゆる事業活に伴い排出されるもの
燃え殻・汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリ・廃プラスチック類・ゴムくず・ガラスくず等(コンクリートくず及び陶磁器くず)・鉱さい・がれき類・はいじんなど、12種類あります。
あらゆる事業活動に伴い排出されるものとは、業種に関係なく排出される廃棄物のことです。事業活動により排出された廃棄物で上記の12種類に当てはまるものが産業廃棄物となります。
②限定業種(特定の事業活動)に伴い排出されるもの
紙くず・木くず・繊維くず・動植物性残渣・動物系固形不要物・動物の糞尿・動物の死体など、7種類あります。
ここでいう特定の事業活動に伴い排出されるものとは、特定の業種が事業に伴って排出した廃棄物です。例えば建設業での新築、改装に伴って排出される木くずや紙くずは産業廃棄物ですが、運送業で梱包によって出た木くずや紙くずは運送業が特定の事業に当たらないため、一般廃棄物(事業系一般廃棄物)となります。オフィスで発生する紙くずも同様に一般廃棄物です。
【特定の事業とは】
紙くず・・・建設業、パルプ製造業、紙加工品製造業、新聞業、出版業
木くず・・・建設業、木材製造業、パルプ製造業
繊維くず・・・建設業、繊維製品製造業以外の繊維工業
動植物性残渣・・・食品製造業、医薬品製造業、香料製造業
動物系固形不要物・・・と畜場、食鳥処理場
動物の糞尿、動物の死体・・・畜産農業
また、廃棄物処理法では「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」とされています。
上で記したように、法律で産業廃棄物の種類は定義されてはいますが、実務上は産業廃棄物かどうかの判断は事業者自らが行い、処理しなければならないということです。廃棄物処理法は、その判断を地方自治体に任せています。地方自治体は地域の実情を考慮して自主的・自律的な判断で廃棄物処理法を運用できるため、地方自治体によって判断が異なる場合があります。
さらに廃棄物処理法では、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずる恐れがある性状を有する廃棄物」を特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物として規定しています。
特別管理産業廃棄物は、取扱いを間違えると、生命や環境に深刻な被害をもたらす可能性が高い廃棄物です。このため厳格な管理を求められており、必要な処理基準を設け、通常の廃棄物よりも厳しく制限されています。特別管理産業廃棄物は、厳しい管理が必要とされますが、産業廃棄物の一種です。
産業廃棄物処理業務の種類
産業廃棄物処理業務の種類には産業廃棄物収集運搬業と産業廃棄物処分業があります。
①産業廃棄物収集運搬業とは
扱う産業廃棄物の種類によって産業廃棄物収集運搬業と特別管理産業廃棄物収集運搬業に分かれます。
排出業者から委託を受けた廃棄物を産業廃棄物処理施設まで運搬する業務で、積替保管を含まない場合と積替保管を含む場合があります。
「積替保管」を含まない場合とは・・・
廃棄物を収集した後、産業廃棄物処理施設まで下ろすことなく、直接運搬する業務です。
「積替保管」を含む場合とは・・・
収集した廃棄物を保管場所で保管し一定量に達した時にまとめて運搬したり、運搬の途中で別の車に積み替えて産業廃棄物処理施設に運搬したりする業務です。積み替えや保管ができると効率的な配送ができ、運送コストを削減することができます。
ただし、産業廃棄物の積み替えを行う場合は一定の基準を満たす必要があります。たとえば、周囲に囲いが設けられ、産業廃棄物の積み替え場所であることの表示がされている場所で行うことや、積み替えの場所から、産業廃棄物が流出、放出、地下浸透したり、悪臭が発散したりしないように必要な措置を講じることになっています。
②産業廃棄物処分業とは
産業廃棄物を処分する業務として産業廃棄物処分業と特別管理産業廃棄物処分業があります。
処分業は法律で区分が規定されているわけではありませんが、最終処分業と中間処理業の2種類に分かれます。廃棄物を埋め立てなどするのが最終処分業で、中間処理業はリサイクルをしたり、最終処分業の前段階として、最終処分しやすいように焼却したり、環境に配慮するため無害化する処理を行う業者です。
まとめ
戦後急速な産業の発達により、有害廃棄物が大量に排出され、人の健康や生活環境の破壊等大きな社会問題を引き起こしてきました。
その後、生活環境の保全が必要であるとの考えから、廃棄物の排出抑制、再生利用、適正処理に対処する「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)が制定されました。
産業廃棄物を正しく処理し、環境を保全するため、産業廃棄物処理業者は処理・運搬を適法に行っていく必要がありますね。