近年、耳にするようになった、民泊とはどのような制度でしょうか?

 

 

背景

官公庁のデータによると、2015年の訪日外国人旅行者数は約2000万人となっています。これは10年前の2005年と比べると約3倍となっており、この10年間で急激に外国人環境客が増加したことが分かります。
これだけ急激な観光客の増加があると、その観光客が宿泊する施設が必要となってきます。
既存のホテルや旅館だけでは宿泊施設が足りず、また大型の施設を建設するには場所的要件や膨大な費用などを考慮するとすぐに対応できるものではないため、仲介サイトなどを経由して個人宅を貸し出す民泊が注目されるようになりました。

 

民泊とは

宿泊用に提供された個人宅の一部や空き別荘、マンションの空室などに宿泊することです。

民泊には、旅館業法が適用される民泊、特区民泊、新法の民泊の3つがあります。

①旅館業法が適用される民泊→簡易宿所(青少年の家や山小屋など)
②特区民泊→国家戦略特区として指定された地域で民泊として利用できる、国家戦略特別区域外国人滞在施設(日本人も宿泊可)
③新法で定められる民泊→個人宅を宿として提供、現在検討段階

があります。

 

旅館業法とは

旅館業とは、施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業をいいます。
旅館業には、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4つがあります。

①ホテル営業→洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの

②旅館営業→和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの

③簡易宿所営業→宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの

④下宿営業→施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業

(宿泊とは、寝具を使用して施設を利用すること)

民泊の一つとしてある簡易宿所は旅館業法の営業の一種であり、旅館業法の適用を受けるため、構造設備や場所的要件等細かな規定が定められているため、一般的には通常の個人宅では要件を満たすことが難しいと考えられます。
また、特区民泊は国家戦略特区として指定された一部の地域のみでの営業のため、新しく法律で定められることが検討されている民泊が注目されています。

 

新法の民泊とは

新法の民泊とは従来の旅館業法にはない新しい営業形態です。
この民泊の対象となる施設にも、満たさなければならない要件があります。

新法の民泊の対象施設は、ホテルや旅館ではなく、住宅です。
住宅を活用した宿泊サービスの提供であり、住宅を一日単位で利用者に利用させるもので、一定の要件の範囲で、有償かつ反復継続するものとします。
一定の要件を超えて実施されるものは、新たな制度枠組みの対象外であり、旅館業法に基づく営業許可が必要となります。

一定の要件とは・・・
既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として取扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要です。
また、年間提供日数上限などを設定することも考えられますがまだ検討段階です。

基本的な考え方としては、「家主居住型」と「家主不在型」に区別した上で、住宅提供者、管理者、仲介事業者に対する適切な規制を課し、適正な管理や安全面・衛生面を確保しつつ、行政が住宅を提供して実施する民泊を把握できる仕組みを構築するというものです。

①家主居住型とは

住宅提供者が、住宅内に居住しながら当該住宅の一部を利用者に利用させるものをいいます。
この場合、住宅内に居住する住宅提供者による管理が可能です。
住宅提供者は、住宅を提供して民泊を実施するにあたり行政庁への届出を行う事とします。
住宅提供者には、利用者名簿の作成・備付け、最低限の衛生管理措置、簡易宿所営業並みの宿泊者一人あたりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、住宅のみやすい場所への標識提示、苦情への対応、当該住居への法令・契約・管理規約違反のないこと、安全面・衛生面を確保することが求められます。

②家主不在型とは

住宅提供者の不在中に住宅を利用者に利用させるものをいいます。
住宅提供者は、住宅を提供して民泊を実施するにあたり行政庁への届出を行う事とします。
この場合、家主居住型に比べ、騒音、ゴミ出し等による近隣トラブルや施設悪用等の危険性が高まり、また、近隣住民からの苦情の申し入れ先も不鮮明となります。
そこで家主不存型の民泊については、住宅提供者が管理者に管理を委託することを必要とし、適正な管理や安全面・衛生面を確保することが必要となります。
管理者は行政庁への登録を行う事とし、管理者は住宅提供者からの委託を受けて、利用者名簿の作成・備付け、最低限の衛生管理措置、簡易宿所営業並みの宿泊者一人あたりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、住宅のみやすい場所への標識提示、苦情への対応、当該住居への法令・契約・管理規約違反のないこと、安全面・衛生面を確保することが求められます。

 

まとめ

新しく民泊の制度が法定されれば、新たなビジネスチャンスが広がり経済の活性化も期待されます。
また、オリンピックを見据えた宿泊施設の確保や空き屋対策など、現状問題とされている課題の解決策になるとも考えられます。
反面、近隣住民への迷惑とならないよう、また違法な民泊が増加することのないよう法を整備する必要があると思います。