株式会社はもっとも一般的な会社の形態であり、取引先からの信用面等を考慮し、株式会社で設立をするという場合が多いです。
株式会社を設立するにはどのような手続きが必要になるのでしょうか。
会社概要の決定と準備
会社を設立するにあたり決定しなければならないものとして、以下の項目が挙げられます。
①会社名
最初か最後に「株式会社」と付ける必要があります。
有名企業の名前や、「銀行」など法律で禁止されているような名前を入れない限り自由に決めることができます。
②事業の目的
会社は事業目的として定款に定めた事業以外のことをすることはできません。
将来行う予定のあるものは、事業目的として定めておくのがよいです。
事業目的は、
1)一般に分かりやすいもの
2)利益をあげる目的であること
3)違法性がないこと
である必要があります。
③本店所在地
会社の住所となるものです。
定款作成や登記の申請で必要となります。
④事業年度
決算を何月にするか決定します。
一般的には会計年度と同じ3月決算の会社が多いですが、自由に決めることができます。
決算作業が忙しくなる時期と事業が忙しくなる時期が重なると大変ですので、業務が繁忙な時期を外して決算月を決定するほうがよいといわれています。
また、消費税の免税なども考慮し決めることが多いです。
⑤資本金の額
法律上、資本金は1円でも会社を設立することは可能です。
しかし、取引先となる相手も登記簿で資本金を確認することが多いですし、融資をうける際にも考慮されます。
当分の運転資金があればよいとされていますが、資本金が1,000万円までの場合税金面でメリットもあるので、会社の信用という面や税金のメリット等を考慮して決めるのが良いでしょう。
⑥発起人
株式会社の設立方法には「発起設立」と「募集設立」があります。
発起設立・・・設立時に発行する株式の全てを発起人が引き受ける方法
募集設立・・・設立時に発行する株式の一部を発起人が引き受けるほか、残りの株式を引き受ける人を募集して設立する方法
中小企業の多くは発起設立を選択します。
中小企業では、家族や親族、知人など、身近な人のみがお金を出し、お金を出した人全員が発起人となる場合が多いです。
募集設立と比較して、発起設立の方が手続きも簡単なうえに費用も安いため、発起設立を選択する場合が多いです。
発起人は一人でもよいです。家族や親族、知人にお金をだしてもらった場合は、お金を出した人全員が発起人となります。
発起人は会社設立後に株主となり、定款の変更など、会社の重要事項を決めることができる立場となりますので、あまりに多いと意見が割れ重要事項の決定が進まなくなることも考えられます。このことから、近年は中小企業の設立の際、発起人1人役員1人とする会社も多いです。
⑦役員と機関
1)取締役を決める
株式会社の必要機関として、取締役が1名以上必要となります。ただし、取締役会を設置する場合は3名以上必要となります。
取締役は会社の経営を行う役割を担います。役員は発起人が選任します。中小企業では、「発起人=役員」となる場合が多いです。
会社設立後は株主総会で株主が取締役などの役員を選任します。
2)代表取締役を決める
代表取締役とは、会社を代表する権限を持った取締役のことです。
取締役が複数いる場合、定款で定めるか、株式総会で取締役の中から代表取締役を決定します。
取締役が1名ならその人が代表取締役になります。代表取締役を複数置くことも可能ですが、意見が合わなかった場合経営に支障をきたすことがあるので、1名とするほうがよいです。
3)取締役会を設置する場合
取締役会を設置する場合は、取締役の中から代表取締役を選ぶ必要があります。
設立時は定款で代表取締役を定めておくことができます。
取締役会とは、取締役3名以上からなる会社の業務執行の意思決定機関です。取締役会を設置すると、会社の業務については取締役会という会議で業務執行の決定をし、それを代表取締役が実行していくということになります。
取締役会を設置した場合は監査役を設置する必要があります。(会計参与を置く場合を除く)
身内だけで会社経営をする場合等中小企業の多くは、取締役会を設置しないことが多いです。
4)役員の任期を決める
役員は、一度選ばれるとずっとその職務に就いているという訳ではなく、それぞれに任期があります。
任期が終わると同じ人が引き続き取締役などになる場合も「重任」の登記をしなければなりません。また任期の途中で取締役などを辞める場合は「辞任」の登記が必要です。
取締の任期は原則2年、監査役の任期は原則4年ですが、譲渡制限会社は任期を10年とすることができます。
譲渡制限会社とは・・・
株式が知らない間に第3者に譲渡されると、会社の経営に支障が出る可能性があります。そのようなことを防ぐために、会社が許可した人のみに株式の譲渡を認める設定をすることができ、中小企業の多くが設定しています。
取締役および監査役の任期は原則は上記のようになりますが、譲渡制限会社の場合はいずれも任期を10年まで延ばすことができます。
取締役が一人の場合など、任期を迎えるごとに登記をする手間と費用のことを考えて、譲渡制限会社とし、最長10年としておくことが多いです。
このほかに
会社印鑑の作成(設立書類に押す印鑑や設立後に業務で使用する印鑑)
や
印鑑証明書の取得(法務局で登記を行う際に使用)
をしておく必要があります。
定款の作成と認証
上記で決定した事項の他、
・公告を行う方法(官報による、電子公告による等)
・発行可能株式総数
・株式の譲渡制限
等を定めておきます。
定款は紙の定款でも良いですし、PDFの電子定款にすると、登記申請の際に定款に貼る収入印紙代4万円が不要になります。
株式会社の場合は、公証役場で定款の認証を受ける必要があります。
認証とは、定款が正しい手続きに従って作成されたことを公的機関が証明することです。
設立する会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証役場で行います。
登記書類の作成
①設立登記申請書
②登録免許税納付用台紙
③発起人の決定書
④取締役就任承諾書
⑤代表取締役就任承諾書
⑥取締役全員の印鑑証明書
⑦払込証明書
⑧印鑑届出書
等を作成します。
会社設立登記
法務局で登記の申請をした日が会社の設立日となります。